いつもお世話になっております。エミリーです。
今回は、最近ゲーム関連以外のところも巻き込んで、連日話題になっているアサシンクリードシャドウズという作品の騒動について、一個人の視点からまとめてみようと思います。
何やら発売中止を求める署名活動が活発とのことで、ニワカながらシリーズのファンとしてとても悲しいです。
しかしながら、今回のこの騒動は、センシティブな問題に対して、UBI側の対応があまりに不適切であることは私から見ても感じられます。
適切に問題を切り分けたうえで、ゲーム的な問題について、一つ一つ解説していきます。
アサシンクリードシリーズについて
この問題の背景を正しく理解するために、まずはアサシンクリードというゲームタイトルについて、簡単に知識を持っておくべきだと思うので、解説します。
アサシンクリードは、UBIソフトの看板作品とも言えるシリーズです。
画像引用:steam版アサシンクリード2公式サイトより
世界観を簡単に説明すると、歴史の中で暗躍する「テンプル騎士団」の蛮行を阻止するため、「アサシン教団」に所属するアサシンをプレイヤーが操作し、作りこまれた歴史上の都市を自由に駆け回りながら秘密作戦、暗殺を行うといった内容です。
このシリーズの魅力的なところは、フリーランニングといわれるシステムで、ちょっとした建物の隙間に手をかけてどんどん登っていき、天井を駆け巡って自由自在に街を駆け回るシステムです。
これによって通常、アクションゲームでは退屈になりがちな移動が魅力的なものになり、街を駆け回っているだけで面白いという画期的な体験をすることができました。
最近はオープンワールドのゲームとかで、快適な移動なんて当たり前になってるけど、そういった要素を早い段階で取り入れていたイメージだね。
また、この要素にプラスして、ゲーム内の舞台になっている過去の都市の作りこみが本当に素晴らしいものでした。
加えて、このゲームの舞台の作りこみこそ、今回の問題の一つの要因になっている気がします。
時代考証、舞台となるロケーションの作りこみ
作品の方向性を決定づけた2作品目であるアサシンクリード2の段階で、既にゲームの舞台となるロケーションを可能な限り現実に近づけたということをセールスポイントにしています。
参考URLを張りますが、開発側が売り込みの際に、最も安価なイタリア旅行だ、という風に表現しています。実際に旅行にいかなくてもこのゲームを遊べば、それに近しい体験ができるということですね。
[TGS 2009]プロデューサーが語る「アサシン クリード II」の魅力。ユービーアイがプレス向けカンファレンスを開催 (4gamer.net)
凄くオシャレな売り文句じゃない?
同時にゲーム内で観光名所の再現も精力的に行われており、疑似的な観光旅行体験という部分はかなり力を入れているのが分かると思います。
更に、時代考証という意味で、最近の作品はその方向性をを強めています。
2017年発売の、古代エジプトを舞台にしたアサシンクリードオリジンズでは、ディスカバリーツアーなるモードが実装されました。以降のいくつかの作品にも、同様のモードが実装されています。
ディスカバリーツアー by Ubisoft:教師の学習用教材 | Ubisoft (JP)
これはリンクにもある通り、学習用の教材として使われることを想定したモードです。
以下に、リンク先にある記載をそのまま引用します。
「ディスカバリーツアー」は、歴史家や専門家と協力し制作されたのですが?
はい! 「アサシン クリード」全作品で継続的に行われてきた歴史家や専門家とのコラボレーションに加え、「ディスカバリーツアー:古代ギリシア」、「ディスカバリーツアー:古代エジプト」、「ディスカバリーツアー:ヴァイキングの時代」は、各時代の文化や時代背景を専門とする外部の専門家の協力を得て制作されています。内容が正確であること、教育に適したコンテンツであることに注力し制作されています。
参照URL
これから紹介する、今回の騒動を知っていると、何とも真偽を疑ってしまうのが、本当に悲しいのですが…。
簡単にまとめるとここまでで主張したいことは、アサシンクリードというシリーズは、歴史を題材にし続け、歴史にリスペクトを払っている作品群である。とここ十年のゲーマーは信じ続けてきたということです。
ちなみに、今回の騒動を起こしている日本が舞台のアサシンクリードシャドウズでは、ディカバリーツアーは実装されないことがすでに明言されています。
参考URL
どうしてディカバリーツアーができないのかな?
10年以上前から、日本を舞台にしたアサクリは望まれ続けていた。
今回、資料を集めていたところ、こんな記事を見つけました。
このリンクだけ見ると、何のこっちゃって感じかもしれませんが、実はこのインタビューは2010年の記事なのです。
つまり、10年以上前から、世界中で日本を舞台にしたアサシンクリードという作品は求められ続けてきた。ということですね。
また、該当URLからインタビュー部分を一部引用します。
ファンの多くが日本の中世期をテーマにしてほしいと期待しているのも知っていますが,知り合いの日本人に聞くと,みんな“止めたほうがいい。日本人は外国人に理解できない,自分なりの世界観を持っている”って答えるんですよ
パトリス・デジーレ氏(Patrice Désilets)へのインタビューより 参考URL
まるで現状を見ているかのよう。正鵠ですね。
ちなみに、この際にインタビューに答えてらっしゃるパトリス・デジーレ氏は、既にUBIを退社しており、一説には不当な解雇であると本人は不満を表しているそうです。
なんか調べれば調べる程大丈夫じゃない気がしてきた…。
加えて、実際の歴代シリーズのゲーム内にて、日本でもアサシンが活動していた痕跡がある。といった、日本を舞台にした作品を仄めかす描写は何度かありました。
これについては筆者がそこまで詳しくないので、明確にソースを出せないのですが、確かにそれらしき記載を見て、実際にワクワクした覚えがあります。
昔のゲームなので詳しいところまで思い出せず…申し訳ない。
前提を踏まえたうえで、今回の情報を確認
・アサクリは歴史に敬意を払う素敵なゲームシリーズであり、歴史の教材になる程のものを作る。
・日本には忍者という題材もあり、昔からの匂わせもあることから、とても期待できる。
ここまで読んでくださった方なら、ゲーマーと同じ視点に立てているはずです。そのうえで、今回騒動の発端にもなっているこの動画を見ていただきたいです。
【日本語吹替版】『アサシン クリード シャドウズ』公式シネマティックワールドプレミアトレーラー (youtube.com)
一回目で見て、おや?ってなったのですが、二回目以降ツッコミどころを理解して、面白アハ体験ムービーとしてみるようになりました。アハ体験って死語じゃない?
・神社には見えない謎の祠?で二礼二拍手一礼(神社だとしてもお線香を炊いてる?)
・正方形畳
・ツッコミどころが多すぎる謁見シーン(座ってる場所、姿勢等)
・桜と芒と鶴が同時出現(季節の概念の消失)
筆者が日本人だからこそ変に見えてしまうのかな、とも思ったのですが。国内外でそれなりにツッコミがあったとのことで、やっぱおかしいんやなと再確認できました。
個人的に正方形の畳が面白すぎて一気にギャグ作品になったのですが…。昔ゲームのバグで鉄板お冷とかありましたけど、ああいうシュールなネタに弱くて、凄いツボっちゃうんですよね。
閑話休題、気になったのが挙げたところくらいで、まあ他はゲームとして遊ぶための脚色としてこんなものなのかな、世界で発売するためのものだし。と筆者の場合は別にそこまで問題意識はありませんでした。
とはいえ、前述のとおり、これまで色んな地域の歴史の教材を提供するくらいだったハズのアサシンクリードシリーズが、大真面目に出した日本のトレーラーがこれか。という失望と悲しみは多少ありました。
そして、ここまでが前提です。正直、この前提だけなら、期待外れなクオリティのトレーラーだった。というだけで、そこまで大事ではないです。
問題を切り分けた際、確かに問題ではありますが、炎上しているのはそこではないです。
この前提とは別に、今回の一番大きな問題である「弥助」を主人公に据えたこと、そこに関する公式のコメントについて簡単に解説します。
アサクリで初めて、実在の黒人男性である「弥助」を主人公に起用
これまでのアサクリでは、歴史上の人物が登場してキーパーソンになることはあったものの、実際に主人公としてストーリー(史実)を追体験するようなものはなかったはずです。
筆者注:これについて、もし過去作全てプレイしたガチ勢がいらっしゃったら正しいかコメントいただきたいです。すべての作品は遊べておらず。申し訳ないです。
それが今回、初めて、大々的に主人公に実在人物である弥助を起用するということで話題になりました。
また、単独での主人公という訳ではなく、日本人の奈緒江というお姉さんもいるダブル主人公のようですね。PVで活動していた彼女です。
弥助とは
ここ10年くらいでゲームや漫画でも取り上げられるようになってきた、信長公記(しんちょうこうき)などの史料にも記載が認められる黒人男性です。
筆者はそこまで詳しい訳はないので、簡単に調べたモノを記載します。
イエズス会の巡察師に付き従う使用人として来日、信長に謁見したとの記録が残されています。そこから当時初めて黒人を見た信長が興味を持ち、身柄を譲ってもらって自分の近くに置いたとのことです。
いくつかの資料で、信長の近くに黒い大男がいた、という情報が認められるので、その後信長の傍に仕えていたのは間違いないとされています。
ただ、その後、本能寺の変の際に、謀反を起こした光秀に捕らえられ、南蛮寺に送られた、というものを最後に一切資料に登場しなくなります。
このことから、実在はほぼ間違いないが、情報が少なく、信長に仕えていた以上の情報がわからないという謎の多い人物なのです。
個人的に好きな創作の弥助
筆者は歴史ものゲームや漫画をちょこちょこ見るのですが、その中で印象に残った弥助をご紹介します。話の本筋にあんまり関係ないので飛ばしても構わないです。
仁王の弥助
戦国死にゲーの異名を持つコーエーテクモゲームスの仁王という作品に、弥助が登場していました。しかもボスキャラクターとしての登場で結構強く、必死に動きを見切ろうと頑張っていた思い出があります。
また、この仁王という作品ですが、主人公がウィリアムアダムス、別名三浦按針といい、西洋人でありながら家康に取り立てられて武士の身分を手に入れた記録がしっかり残っている、異色の経歴を持つ主人公なのです。
ゲーム自体は妖怪がたくさん出てくるダークファンタジーで、あまり史実的な部分には触れられなかったイメージがあります。厳島で海に落ちまくったのが一番の思い出。
この辺りの歴史は面白いのでよかったら調べてみてください。ゲームも少し昔の作品になってしまいましたが、楽しかったですよ。
へうげものの弥助
こちらはマンガですね。発音するときは「ひょうげもの」と発音します。
モーニングで連載されていた古田織部という信長の家臣を主人公にした漫画です。
この作品でも、信長の身辺警護、ガードマン的な感じで登場し、あるシーンで主人公の織部を救出してくれます。多分その印象かな。
また、この作品は、本能寺の変などを有名な「とある黒幕説」を採用しており、その意味でも作品自体が強く印象に残っています。
また信長の野望で使用可能な登場人物になったり、筆者は視聴していないのですが、ネットフリックスでそのままズバリな弥助という作品もあったそうですね。
といった具合に、戦国時代を舞台にした作品だとちょこちょこ見かけていたので、そんなに降って湧いた、という印象はありませんでした…が。
なぜ日本人が主人公じゃないのか、という問いとその回答
ここからが一番大きな問題です。
今回、ずっと待ち続けていた日本が舞台のアサシンクリードである、ということはお伝え出来たと思います。そんな今回のシャドウズが、弥助を主人公に据えたことについて、インタビューに答えています。
その際に、インタビューに回答した内容が差別的な発言ではないか、と議論を呼んでいるのです。
既に該当の部分は削除が行われてしまっているので、このサイトで共有することができません。各自調べていただければと思います。
ということで、この部分が切り分けを行った際の一番の大きな火種だと認識しています。
この手の問題は、話題として挙がってしまったが最後、本職の活動家の方たちが入ってきてしっちゃかめっちゃかになるので、間違いなく一番の火元になっている風に見えます。
要するに、ゲームのPVやコンセプトで炎上しているのではなく、開発側の姿勢、態度によって火がついています。
これが切り分けの結果、私の感じているこの記事で一番に伝えたいことなのです。
まとめ
改めて、最後に今回の問題点を切り分けていきます。
歴史考証の正しさを誇っていたアサクリシリーズなのに、ずさんなものが出てきた!
一ファンとして、日本を舞台にしたアサクリを楽しみにしていた人間としては凄く残念です。
願わくば、改めて正しく歴史考証を担当してくださる方に依頼して、一からとは言わずとも作り直しをしていただければと思いますが、もう11月発売なくらいには作り終えてるとのことで、ちょっと非現実的かな…。
日本が舞台の作品なのに主人公のひとりが黒人だ!
これも、この部分だけを抜き取るならそこまで問題ではないように感じます。
ただし、前述しましたが、これまで史実の人物を主人公に据えてこなかったものをどうして今回は弥助本人である。としたのだろうと疑問を感じます。
弥助がモチーフのオリキャラであれば、ここまでの問題にはなってなかったはずです。
ただでさえ謎の多い実在の人物を主人公に据えて、オリジナルストーリーを展開してしまうと、その意図はなくても歴史修正主義という風に捉えられてしまいますよね。歴史を重んじてきたアサクリならなおさらです。
制作スタッフのインタビューで差別的と取られかねない発言があった。
これが火元ですね。上二つの部分もそれぞれ問題ではあるのですが、この火元を燃え上がらせる燃料になっているように見えます。
素直に、一部差別的に取られかねない表現がありました。そういった意図は一切ございません。お詫びして訂正します。と隠したりせずに公表すればここまでのことにはならなかったのではないでしょうか。
ただ、筆者もこういった文章を書く手前、インタビューを受けて記事にした側と、インタビューされた側の二つの面があることは念頭に置くべきかもしれません。
記事にする側が事前に文字に起こす際に表現を変えることができれば、もしくは記事公開時点でそういった捉え方をされる懸念を伝えることができれば、こういった事にはならなかったかもしれません。言葉って難しい…。
また、近いうちに別で記事を出そうと思いますが、今回のように海外スタジオの作成する日本舞台のゲームとして、「Ghost of Tsushima」というゲームがあり、こちらは筆者が実際に遊んでみてあまりに日本文化への理解が高すぎて衝撃を受けた作品でした。
実際、何人もの日本人が開発に携わり、舞台になる対馬に何度もスタッフが足を運んで、公式発表前に現地の地元新聞に取り上げられてバレかける、なんてエピソードがあったくらいでした。
そういった傑作の発売があった後なので、比較されたうえでどうして正しい歴史考証もなしにゲームを作ってしまったのか、というのもあったりします。
一番なのは、UBIが今回の騒動を受けて、新たに頼れる時代考証を担当してくださる方をパートナーにおいて、入念な取材の上で改めてゲームを作り直してくれることだと思います。
今回の件で失いつつあるブランドの信用を取り戻すために、何処に出しても恥ずかしくない日本舞台のゲームを作ってくれれば、一ファンとしても嬉しいです。
7/17追記
当記事は、7月上旬時点で出ている情報からまとめを行いました。しかし、7月中旬現在、驚くほどのスピードで様々な問題点が浮き彫りになり、この記事の情報は少し古くなってしまっています。
一応、一番最初の火元は何だったのか、そもそもアサクリシリーズとはどういったものなのか、といった観点で見た際には、当記事もまだ有用な情報をお伝えできていると判断し、残したままにしておきます。(いつの間にかこの記事が消えていたら察してください。)
恐らくこの追記の後もどんどん問題が出てくるような気がするので、最新の情報が知りたい方は逐一その時点での最新情報を検索して追ってみることをおススメします。
シリーズのファンだったものとして本当に残念です。
追記は以上です。
どうか世界から差別がなくなりますように。この記事は以上になります。
コメント